五十の手遊び 佐藤拓夫のライター徒然草

2022年5月に50歳になるのを機にエッセイをしたためるブログを始めました。10年続いたら祝杯をあげよう。

ライターの仕事

ライティングの“神動画”を紹介したい

日本の一部の大学では「ライティングセンター」なるものを設置している。目的は学生の文章作成をサポートすること。なぜ大学がこのような活動をしているかといえば、日本の(公立)学校では日本語の文章作成の基礎を丁寧に教える機会が決定的に不足している…

売れない美術作品は「ゴミ」なのか?

「世の中の展覧会の85%はゴミ」 アートライターを志す身としては、ドキッとさせられる言葉だ。雑感を書いてみよう。 artnewsjapan.com 多くの場合、展覧会の印象の良し悪しは、展示作品の良し悪しに比例する。したがってジェリー・サルツが吐き捨てた言葉「…

ジュリアンと加守田、二つの巨星を益子でみる

栃木県益子町の益子陶芸美術館 で開催中の展覧会、「ジュリアン・ステアと加守田章二」(4月7日まで)を取材した。記事はいつものように美術展ナビに掲載していただいた。 artexhibition.jp 東京から車で2時間ほどというアクセスの良さもあり、益子の知名度…

春なのに、虚しくなる〜大谷翔平とアテンションエコノミー

大谷翔平選手の元通訳、水原一平にまつわる記事が氾濫している。どの記事も執筆のトーンは同じで、「もし」や「たぶん」や「おそらく」ばかり。確たる証拠がまだない状態なので仕方ないとはいえ、よくもまあ憶測であることないこと垂れ流せるものだ……と呆れ…

光線画の世界に酔う展覧会を取材した

那珂川町馬頭広重美術館で開催中の「タイムスリップ明治-夭折の絵師井上安治の「東京」-」を取材した。記事は美術展ナビで読める。 artexhibition.jp 井上安治は、明治の浮世絵の大家・小林清親に15歳で弟子入りし、17歳で画工(浮世絵の下絵を描く職人)…

Hello again

昨年夏に一時停止した「書く仕事」を師走に再開して2ヶ月。ようやく、やっと、かつての感触を取り戻しつつある。ライターを自称しているにもかかわらず、書いておカネをもらうという営みから離れた数ヶ月。どうやって生きていたかといえば、基本は寝て起き…

ライターとは無縁の世界で起きた《仕事のジレンマ》について考えてみる

すごい記事である。今、仕事で壁にぶつかっているせいかもしれないが、表皮をつきやぶって心臓のあたりまで届く威力があった。 www.ktv.jp 「大量殺人犯の命を助けること」が自分の仕事だと知ったとき、どのような態度を取るべきなのだろう。自分の仕事が、…

《カケルスクール詐欺事件》をめぐる若干の考察(Part 2)

昨年の12月に、ライタースクール《カケルスクール》をめぐる詐欺事件に関するエントリを書いた。 hatesatetakuo.hatenablog.com 前回の記事から10ヶ月、事件から1年が経過したのを機に、あらためてカケルスクール事件を振り返ってみたい。 *** カケルスク…

エモく書かずにエモくする

こういう記事にときどき出会えることが海外のコラムの面白さだと思う。執筆者は『ザ・ニューヨーカー』のスタッフライターであるルイーザ・トーマス。 www.newyorker.com 内容を知りたい向きは、翻訳アプリを使って文章の雰囲気だけでも感じてみてほしい。Go…

馬頭広重美術館の取材で思い知らされた《学芸員》という存在の影響力

栃木県那珂川町の馬頭広重美術館で開催している「旅する大津絵展」を取材し、学芸員から詳しくお話をうかがった。記事は美術展ナビで読める。 artexhibition.jp 驚いたのは、本館には学芸員が3名しかいないということ。年間8回ほどの企画展を開催すること…

ライターが「夢のような仕事」になる日はくるか?

スポーツ全般が好きな私だが、選手の経験があるのはサッカーと水泳だけ。ほかの競技は見る専門だ。中でも野球が好きで、ここ数年は大リーグにハマっている。*1 注目しているのは、(言うまでもなく)エンゼルスの大谷翔平選手の活躍ぶりだ。むろん他の日本人…

仕事と旅の曖昧な関係〜高崎出張の回想

仕事で高崎市にでかけた。高崎は群馬県の中南部にある都市だ。群馬県は私が暮らす栃木県のお隣であり、高崎もそれほど離れてはいないのだが、なぜかこれまで縁遠い街だった。今回、高崎市タワー美術館で開催中の展覧会「比べて見せます!日本画の魅力」を取…

すべてのポートフォリオが消えた夜

ライターが営業するとき、先方にポートフォリオを見せる場合がある。ポートフォリオはこれまでの仕事の履歴や主な実績をまとめたものだ。クラウドソーシングだとポートフォリオの出番はあまりないと思うが、企業やメディアに直接営業する場合、ポートフォリ…

ラジオ配信を始めてから気づいた即興表現の効果

昨年の10月から、スタンドエフエム(スタエフ)で音声配信(個人のラジオ番組のようなもの)を始めた。 配信といっても動画とは違って難しい技術も道具もいらない。スマホにスタエフのアプリをインストールし、テーマを決めたらアプリの録音ボタンを押して好…

《カケルスクール詐欺事件》をめぐる若干の考察(Part 1)

ライターは知的労働者であると一応みなされている。ここでいう《知的》という言葉は、単に情報を扱い編集するスキルだけを意味しない。情報に操作されない抜かりなさも含んでいる。《ずるがしこいやつに騙されない知性》とでも言えるだろうか。 ところが……そ…

「鑑真和上と下野薬師寺」展の取材で得た2つの気づき

過日、栃木県立博物館で開かれている特別展『鑑真和上と下野薬師寺~天下三戒壇でつながる信仰の場~』を取材した。記事はいつものように美術展ナビに載せていただいた。 artexhibition.jp この取材とレビュー記事の執筆の過程で、あらためて大切だなと思っ…

今日「ライターになる」と決意したら、私はどんな準備をするか

私が今日「ライターになる」と心に決めたとする。いったい何から始めるだろうか。思いつくままあげてみる。 1.「ライター 仕事」で検索してみる ライターとして仕事をし金を稼ぐのだから、最初に《ライター 仕事》と検索するだろう。 すると、クラウドソーシ…

文章の4大元素を使いこなす

「あの人の書いた文章って、すごく熱いよね!」 「さすが、〜さんの評論は鋭い」 「この小説、表現がとてもしっとりソフトで、私の好みだわ」 そんな感想を抱いた経験があるだろう。 文章には熱や湿り気があり、明るさや華やかさがある。これらは、温度、湿…

ピンホールの魔術師をたずねて

栃木県立美術館で開催中(9月4日まで)の『山中信夫回顧展』を取材した。記事は美術展ナビに載せていただいた。 artexhibition.jp 山中信夫は1948年に大阪で生まれ、1982年にアメリカで客死した写真家である。創作活動に打ち込んだ期間はわずか12年ほどだっ…

栃木市立文学館と蔵の街の取材で思い出した、宇都宮景観論争をめぐる苦い体験

栃木県の県庁所在地は宇都宮市なのだが、もとは県南の街、栃木市に県庁があった。「名前が栃木市なのだから、栃木県の県都とするのは自然ではないか?」と思うだろう。そういう理由もあるにはあるが、本質はそうではない。 栃木市は例幣使街道の宿場町という…

美術展ナビのコラム「図録開封の儀」を紹介したい

昨年12月から、読売新聞社が運営するアート情報メディア『美術展ナビ』に、美術展の図録を紹介する『図録開封の儀』というコラムを寄稿している。 美術展ナビは、国内の美術展情報を中心に、アート情報を幅広く紹介するサイト。美術展のレビューや著名人のコ…

書けなくて泣いたこと、ありますか?

「記事や文章が書けなくて泣いたこと、ありますか?」 私は一度だけある。出版社の編集者兼ライターとして文章を書いていた頃のことだ。 テーマやあらすじは用意できているし下調べも完璧。でも文章にならないし、言葉が浮かんでこない。日本語らしき文章を…