五十の手遊び 佐藤拓夫のライター徒然草

2022年5月に50歳になるのを機にエッセイをしたためるブログを始めました。10年続いたら祝杯をあげよう。

思い出話

傍観者として朽ち果てていく人生

言葉に表せないほどの艱難辛苦を前にすると、人はよく「神も仏もない」とこぼす。神や仏を信じている人ほど神や仏のせいにしたくなるのかもしれないが、無理もないことだと思う。今回の地震*1で自分自身とことん困惑しているのは、途方に暮れたくなるほどの…

寂しいニュースが届く夏が嫌いだ

2つ立て続けに残念なニュースが届いた。 「大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手が、右肘の靭帯損傷。投手としての今期出場が終了」との一報。先発ピッチャーとしてここまで10勝をあげている大谷選手。打撃は好調で、日本人初のホームラン王も十分狙えるとこ…

お盆になると思い出す父の手紙

大学を卒業してしばらく経ったころ、お盆で帰省した私に亡父が手紙をくれたことがあった。夕飯を食べ終えて食器を片付けようと立ち上がったとき、「ちょっとこれ、読んでみてよ」と唐突に封筒を手渡してきた。父はそれきり何も語らず、便箋を食卓の上に広げ…

雨の日の記憶〜サッカー少年と鬼コーチ

雨模様が続く7月。日本の梅雨は年々熱帯化し、土砂災害と高温多湿のせいで不快指数マックスになる。一方で雨は、私の荒んだ心の中にわずかに残る瑞々しい記憶を思い出させてくれるきっかけにもなる。梅雨の雨空を見あげるたびに思い出すのは、必死にサッカー…

友が待つ佐野へ

私には生涯の宝と決めている1冊の本がある。その本は店では買えないし、図書館で借りることもできない。 本の著者は大竹智浩くんという青年である。彼は私の仕事の相方であり、友だった。 *** 大竹くんは胸ときめかせて入社したはずの星野リゾートを、思…

師走になると思い出す、くだもの屋とパン屋のこと

師走になるとときどき思い出す、地元の二軒の店のことを書こう。 一軒目はくだもの屋だ。なじみの肉屋で惣菜を買って帰るとき、通りを隔てて目と鼻の先にあるそのくだもの屋で、私はいつもりんごや梨やみかんといった季節のフルーツをついで買いしていた。 …

一度しか着なかったオーダースーツ

蒸し暑くなったので一気に衣替えをしたところ、クローゼットの奥から一着の真新しいスーツがでてきた。 ライターを生業とする私は、一日のほとんどを自宅の書斎で過ごす。だから服装に頓着しない。取材で人に会う時もジャケットとチノパンで乗り切ってきた。…

辻仁成さんの文章教室のこと

芥川賞作家・辻仁成さんが主催する文章教室をご存知だろうか。昨年の春以来4回開催され、今後も不定期に継続を予定している。 辻さんは、自身が運営するブログサイトで日々文章を書き、ツイッターと連携するなど、読者との交流を欠かさない方だ。人気作家と…

タバコに支配される生活の虚しさに気づけば、禁煙なんて簡単だ

禁煙に成功したときの小話を書こうと思う。 タバコは高校卒業後もしばらく吸っていたが、あるアクシデントをきっかけにスッパリとやめた。経緯はこうだ。 師走の深更、テレビを見ながらふと手元を確認するとタバコのストックが切れていた。当時の私は深刻な…