「あの人の書いた文章って、すごく熱いよね!」
「さすが、〜さんの評論は鋭い」
「この小説、表現がとてもしっとりソフトで、私の好みだわ」
そんな感想を抱いた経験があるだろう。
文章には熱や湿り気があり、明るさや華やかさがある。これらは、温度、湿度、明度そして彩度と表現できる。これを《文章の4大元素》と呼ぶことにしたい。
- 文章の温度。ホット、動的、有機的/クール、静的、無機的
- 文章の湿度。カラッとしている(ドライ)/ジメジメしている(ウェット)
- 文章の明度。明るい/暗い
- 文章の彩度。はっきり、鋭い(シャープ)、華麗/ぼんやり、鈍い(ソフト)、質素
このような尺度をただの感想で終わらせず、文章をカテゴライズするための理論として構築し、創作活動に応用しようとする。そんな試みはたぶん前例がないだろう(前例を知っている人がいたらぜひ教えていただきたい)。
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文章の4大元素を自在に書き分けられるライターになる。それが私の目標の一つだ。
ただ、温度や湿度といった概念をどうやって具体的な作文リテラシーに落とし込むかが課題だ。仕事のあいまにこのテーマについて考える時間を設けてはいるものの、妙案はまだ見いだせていない。
自分の過去の仕事をチェックしてみると、「この文章はジメジメしていて湿度高め」「なんだかぼんやりとして焦点が定まらない」というように、断片的に分類はできる。ただ一つの記事の中でも、明るい部分と暗い部分、カラッとしている文章とジメジメしている文章が不自然に混在しているなど、統一感がない例もたくさんある。4大元素を自由自在に組み合わせて書けるレベルには全く達していない。
「ライターはどこから来てどこへ行くのか?」で書いたように、私は作家的ライターを目指している。《作家的》の定義は色々あるのだが、文章の温度や湿度を自在に操れることは重要なポイントだと考えている。