12月5日、スポーツライターの賀川浩さんが、99歳で亡くなった。
賀川さんは様々なジャンルのスポーツを取材し記事や本を書いてきたが、専門はサッカー業界である。W杯の取材は10回を数え、最後の遠征取材となった2014年ブラジル大会のときは89歳だったというから「超人」というほかない。
余人の追随を許さない該博な知識と、未来を見据えた愛の溢れる考察。賀川さんの仕事ぶりは単なるジャーナリズムの域を軽々と超え、日本サッカー界の歴史そのものだった。それゆえに、メディア関係者だけでなく選手や指導者からも厚い信頼と尊敬を集めていて、2015年にはサッカー界への長年の功績により、日本人で初めて国際サッカー連盟から会長賞を授与されている。
賀川さんは、(報道によると)98歳まで現役で書き続けていたという。誰も確認はしていないので憶測になるが、間違いなく日本最高齢のライター(スポーツに限らずオールジャンルで)だったし、世界でも類例はないのではないかと思う。
自分でいうのもなんであるが、ライターはそこそこ頭を使う仕事だ。取材対象や執筆テーマが毎回違うから、ルーティンでこなせるものではない。一回一回の取材、一本一本の執筆が真剣勝負である。だからこそ賀川さんは老いてなお明晰な頭脳と豊かな言語感覚を保っていたのだろう。
フリーのライターで仕事をし続ける人にとって、賀川浩という「前例」は大いなる可能性と勇気を与えてくれたと思う。偉大な先輩のご冥福を心からお祈りいたします。